白い馬

 

「白い馬」

ー病める舞姫・15ー

ーー風の種の中から見る景色は

ユラユラ沢山の色で濡れている

重力に引かれなだれ落ちる黄色、緑、夕焼け色はやがて透明な硝子と入れ替わる

その様な目玉のレンズの内側に

真空の穴があった

真っ黒な獣の瞳は砕かれて

眼となり

唯景色共を洗い流すのだったーー

昼の大風に水色マントが立っている。

背後には青空が見える。

アスファルトと空の隙間を薄いピンク色した鳥がかすめていく。

水色マントの周りに、乳房の香りや無邪気に不自由を生きる吐息が僅かに漂っている。

水色マントは人の傷を見つめると口から命を取り出し、そっと差し出したがその人がたちまち扉を閉めたがために枯れてしまった。

枯れた葉は紙切れとなり辺りを荒らし水色マントを襲ってくる。水色マントはバサッと黒いコートを身に纏うと優しさを慎重に避け、紙切れが濡れるか気化するのを待っていた。

命を取り出したがために差し出した肌の個所が膿んで行く。水色マントはその傷の内側をジッと見つめ、その膿みを消す為、静かな石になるのだった。

ダンベル担ぎをするジャージ姿の競技場や円形まな板を勧め合う集団が目の前で舞っている。

遠くの方、真っ黒い洞穴に、喋らなくなった少年やそこに差し込む光で詩集をめくる赤みがかった少女の姿が見える。

ハイビスカスの鳥は羽根を散らしてもう居ない。

しゃがんだ水色マントの膝から少し離れた場所にはいつの頃からか時間が住み始めていた。恐怖や感動の産みだす波形をボキボキと折り何時までも喰っているのだった。

私が隣に座ると、必ずお菓子やジュースを持ってきた。そこにはいつでも使い古された雑巾も付いてくるのだ。

水色マントが顔を上げるたび、黒線が透明な板に垂直に引かれる。そこに商人が現れ、下から上までの駅名を付けた後、旅行券を売り始めた。が、その傍に真空ダイアモンド眼玉が現れ固く光り出した途端、商人も黒線も眼玉も真っ黒く溶けていった。やがて薄いぬめりけとなって水色マント心原にベッタリと蒸れたアスファルトを流し、やっぱり水色マントを真っ黒に真っ黒にしまうのだった。

年末にポツンと街灯が立っている。洗いたてのユニフォームで漫画本少年が白球を投げている。

パンパンッと革手袋に突き刺さる振音は、濡れた車道をひた走るバイクの騒音と重なり錆びれた青トタンを所有し空間の清掃を始めた。古民家の咳も修繕を始めている。

樹々は蓋をして布切れを染めていた。風に吹かれて高い場所から落ちた蟻はまた歩いた。

「俺なら死んでしまうだろうな」

夜はまだこないのかそれともずっと夜なのか、水色マントはわからない。

膝を舐めた空っぽの昼に青風が吹く。「夜に耳がついている‥」。眼を腹から開けると、水色マントの目の前に大きな口と耳が片栗粉を水に溶いた様に手を差しのべ、せがむのだった。

「光の外に立たなければ」と声がして絶望の下を掘る錆びたシャベルで蚊がフォークリフトをしている。ウイリーだって見せていた。飛び交う食う様にうずくまるっているオイルを塗りたくったキャリーは、風が昼間の山蟻と会議を重ね、すっかりガタガタのニワトリにしてしまった。

チンすると旨いぞ。

チン。

が、蓋を開けた途端、未熟児の白馬の腹に、二つの矢が刺さった。そこから流れ出る川の淀みを湿り風に食わせていた白馬は、板張りの廊下で陽だまり水滴の様になった。。子どもの声はまだ知らない。

私は私の名を知らない。

「殴られたから殴ったの」と言う脚を不思議そうに見つめている。

「人に見つかると死ぬぞ」

自分と契約を交わし、命を簡単にジャックする私の姿も見える。手にはクシャクシャのアンパンマン歯磨き粉が握られ、頭の鉢巻には胡瓜が2本と深谷ネギが根っこに土付けたまま括られている。

緑色が夜光りした時や腹に赤爆弾がショートして頭蓋骨を歪ませた歴史的身体事件を考えれば、ホワイトハウスなんぞ土埃だ。身体から生えた腕を朝顔の傍で千切れんばかりに振った日や母が幼い頃バスに温かい弁当を投げ込まれ赤面した話も、誰も居ない部屋でガラス窓に鼻を押し付けて曇った温度を嗅いでいた。きっとクシャミと変わらない。クシュッ。。

「あー!」とデッカな声出した母の瞳は揺れていた。自分に放り出されたまま行き場を失った母とその周りの空間は、淋しさで光っていた。鉄柵を跨いで蓄電マシンの建物から建物へ血を手裏剣にして飛んでいた。

それを食べてきたんだ。

それは悪いことじゃなかった。

キリストなんて一度も会わなかった。冷静な子どもだった。唯、優しさだけで染め上げた私の首を浦添の市営グラウンドや四角い部屋に並べていた。ぽっかり空いていた炎天下を誰も恨まずに歩いていた私を思うと泣けてくる。

賞状をしきりに数えたり、綺麗に服従して人間に授与したがったり、偽赤ペン先生になったのもそんな理由からのように思う。昼も夜も流し台をよじ登りアンパン歯磨き粉を食べていた。ヘソはいつだって興味の対象だった。5階から雪ちゃんと眺めた団地群を今でもハッキリ覚えている。だがそれが何になるのだろう。何かになるはずだ。

恐怖少年はあらゆる場所で、大人たちの演技をくり抜いて顕微鏡に入れていた。水色マントは屈んだついでにいつも草を触る。昼間の溝傍に咲く小さな花が傾くと、「背中の仕業だ。」と声がした。

何度も反復され市営回転プールに流される硬い背表本や唯身体を清掃する風呂場の浮き玩具は日々まっ黄色のペンキを担いで六角形の四角いボールを蹴っていた。数人の子どもが「バッタ、バッタ」と羽根を引き抜き、笑っていた。木漏れ日が恥ずかしそうに木々の影に隠れているのを見た。海の色は細胞全てを強奪し干からびさせて遊んだり、結局消えて行くだけさ。

赤いオールスターを履いていた。暗黙の約束ごとは僕自身にバレないように、形になりはしなかったし、腹も見詰めたりはしなかった。レンジャーピンクがビルの屋上から月明かり背にキャミソールをバスケットコート無しでスローに、とてもスローに光らせた。みんながそれを見ていた。指の合間の土を、ビンに詰め、再び蘇るかと実験した事が誰にでもあるに違いない。しかし結局は荒れた河原に辿り着き、陽に乾かされた電線コードに「遊ぼう、遊ぼう」と言いながら石投げる始末だ。

罪か。扉か。誰もが、というコトバは宇宙までのロケットだ。

未来の青マントが「おはよう」と優しい声で白馬に呼びかけたが、青マントはその声を永遠に封印してしまう。だから白馬は更に傷ついた。

棒っきれ拾って肉騒がせて、ヤドカリにも枯れ葉剤よ。潔癖にさせられる、石投げろとメガホーンでドヤされる。白馬の傷口から流れ出る水にそんな悔し声が混じっている。

「間違ってないぞ、間違ってないぞ!」という民衆の声もするが、みんな死んだ人たちだ。

身体に小さな大きさ測る物差しを付けた新品の機械人間たちの言葉製造場所はどうやらチップが原因だ。

ストーンしてバカなやつ。

何もしなけりゃ早すぎる

早すぎるもの事故起こす

「誰もいない場所に来てしまった。」

空からは髭生やした真剣なイタズラ坊主が糸をたらし、私を釣ろうとしていた。しゃがんで下界を眺めている面は悲しそうだ。

齧りつけよ!震える心は嘘じゃないさ!

けれど浮かれ顔の何倍も明るく見えた。哭いているから天候もいいのか。

物差しを飾ることは出来ないものか。

人間はそれぞれ居心地いい普通に括られている。汗が滝の様に流れ落ちている俺は何なのか。転がり落ちそうだ。死んでいるようだ。

うつむいた石に藻が生えて黄ばんだ給食帽になったような膝を、固い雑草折るように諦めたり、塩っぱい親指握り飯を涙葱に巻き付けきっと必死に嗅いでいた。何回も言うなよ、何回も来るんだもの。ポッキー製菓と纏められ捨てられる恐怖や、便器に身体から頑丈な鉄板を張ったり、スカイザスクーターをふくらはぎに生やしたり大忙しのメタルクーラだ。嬉しかった炎天下には妥協した母がいつもいて、私はプラスチックや冷房を浴びていた気がする。

ギシギシ鳴る階段を小さな灯りになりながらよじ登ると、異界の扉が見えた。最も近くにあり、けして見えない肌、あいだ。苦心しているが、それは既に完璧なのだ。

俺を見ないと危険だ。少年は手をセラミックに変形させ矢を放った。辺りを消滅させたのは、少年の力だけではなかったのかもしれない。

この文章はな、怒りなんだよ。でもその中に、チカチカひかる何かがきみをつぶやくんだ。

勇気と力は別物だ。仕事ボーイが波を馬にして現れ、砂に文字を走らせる。たちまちその業績は唯のクッキーにされてしまうのだった。虚しさに追い付かれる前に、クッキーを噛もう、極度に集中してスパークだ!部屋の隅に待機し直しただけの黒鉛。漕いだって撫でたって秋が来るのさ!

「土に食わせた方が‥。」

溜めに溜め、発せられた少年のその一言にソレミタコトカと虎娘抱えて逃げてった。窓際に座りオリオン星を見ていた白馬の首の物差しが僅かに揺れ、首筋に血が滲む。「俺、居ないんだもの」。古びた雨レンガが徐々に白みがかる様を不安そうに風が見つめている。「やー、なんていうばー?」。少年はその時、仮死状態の微体で目の前の濁り水にバッタが流される様を見た。いつかは綺麗になるものは、恐ろしい。誇りをはじめて白蟻が食べた。

身体の中で仮止になって中断していた今に興行主がやってきて計り売り。眠った振りをしていたが、本当に眠ってしまった様か。爪弄った振りで何を追悼するんだ。たまに起きるが眠っていた方が楽なのか。本当に楽か。

ビュー、、。

風が少年を呼んだ。

「タッタカ、タッタカ、、」

馬の蹄が風にまたがり飛んでくる。土埃は雲になり、夏が後からやってくる。

白馬は夏の様だった。

竜巻やら嵐やらは骨だって走らせるんだ。

水色マントに染み込む硬[かった]皮の残像‥。影だって光だったよ。再び空になびき始めた露。雫。

ポトン、、。地球はオケラの涙だって?そんなバナナ。ポヨ~ン。

どうして意地悪になっちゃうの?肝心な場所で、太鼓叩いた時、真剣だったよ。真剣さは素敵だったよ。

逃げろ、と声がして、寒いのに半袖の敏感白色団から逃げ出した水マントは透明人間を待っていた。赤いランドセルで。花火の音を綺麗に掃除したベランダで、テープは最後に切るものだ。腹の上に夜を掛け砂利の駐車場に寝て、キャッキャと騒ぐ血に笑いかけたりした。無理にキャンデーだってあげていた。気に入られたい訳じゃなかった。気づけば首筋が秩父の山並みだ。いてーよー。母ちゃん、父ちゃん。何処だ。じいちゃんばっちゃん、何処だ。

風だけなら淋しいよ。

風ボウズは何処へ行ったか。

考え尽くしの抜け殻になったダンロップタイヤに、純粋を着込んだ成長期真っ只中のコンパス定規がタンゴの招待状を届けていた。

水色マントは「キャッキャとばかり踏んだって制服なんぞ一捻りだ」「絶対に中学生にはならない!」とか「誓う」とか演説していたが、郵便ポストに黒タイヤがめり込んだ衝撃で面白くなり、武田モデルのサッカースパイク背負ったいん金田虫になっていた。もしもさんま貰ってたら、流れ星にもなったぜ。日本日の丸委員会がその鮮度に惚れ込み、学級体に任命したりしばらく日光に当てたりしていたが突然何を思ったのか古タイヤが真っ二つに割れ、水色マントは棒になってしまった。

「バレー(クラシック)が効くらしい」そんな声がスペイン語で囁かれた。

カルメンだ!やつ以外は汗かかない。努力と根性か、それの反対ばかりでもう萎れた蟻だよ。私は計り。

水色マントは夏なのに真冬の耳装備。オレンジ色の卓上ランプに紙吹雪を散らすと家の隅々で硝子が割れる。

「空は夕暮れ、みんな夕暮れ」

そろそろ、話を変えよう。

アイルランドに妖精がいる。

暗闇も暗黒なら冷えていて清々しい。酸素ボンベでお笑いの練習ばかりしていた。‥深呼吸は、空っ風。決して語れなくて、秋風が生まれた頃の淋しさを身体に絡めるが、その時きいろの雨が螺旋する。いつも病室なんだ。

バロセロナ、ランブラス通りの角あるマンゴー色の柱のなも知らぬ虫について。その直下のカフェテラスで教科書が膝を曲げてコーヒーを飲んでいる。パスタだってコーヒーだって、未来に繋がっていた。そこに喜びのコメントを繰り返す先住民の姿もある。新しい物を毎度買い込んで来る少女がエプロンをこの地区に広めたのだ。セメントにも空き瓶にも評判の薬を進めていた。太陽にいた白馬は危うくその薬を飲まされそうになったという。「太陽はあまりに熱いから」、と言っていた。

「火照った身体は詐欺だ、処刑される。干物にされて洗濯バサミで留められる。」

タ(た)とタ(ゆう)の違いが時たま怖い。威張っているんじゃないんだよ。自慢したいの。どんなに小さなことでも。勝ちたいんじゃないんだよ。喜び方、知らないの。面白いより先に顔を出す不安。チグハグだ。チグハグか。謎で絶対に掴めない。意識が私と他者をようやく繋ぎ止めてはいるが、強くなければならないのか。うずくまって君のそばで。いいかい?いつまでも。そしたら私、やさしいよ。ブッキラボウデ。

夕日は女を花に変える。

「時代だよ」ならば私は待ちんぼう。

朝露や野草に噛まれた事のあるものは、幻想何ぞに旗振らぬ。草たちは平然と将棋を打っているが、その将棋盤は宇宙の果てまで続いているのだ。んな事言ってもほら、、。秋が来るんだよ。

「白いハシゴや階段はあんたを縛るために。」

水色マントの背後から声がする。注意深く観察すると白マントは水色マントの背肉になっていて聖人君子のような匂いがする。サロンパスとかマッキーマジックの、あの、正しさ!

「四角い蛍光灯が口を開けている。」

強がって速度を変えた水色マントは穴に落ち、たちまち全てを忘れてしまった。記憶だけを握っている。身体も故障したようで、部品磨きのピストルを持った煙少年になっていた。先端の赤いタバコを審査する車のヘッドライトに愛しい人の面影が映ったが自分自身が現れてアルミホイルにでもなったのか。置物の狼にも臭いがあるよ。少年に、「時代、、。」と手を添えて歩かせる何かが。少年は無意識に黒コートを纏うと青くしなる棘になった。体が生きているのが遠くからでもわかるんだ。その時は昼だろうが夜だろうが灰色のアルミ屋根が透けて里芋畑を赤い夕日が照らすのだ。

白マントが消えた瞬間を少年も身体も知っていた。唯の身体。。掴めないな、唯の身体。

水のマントが「おーい」とやまびこごっこをしている。「おーい」。

自分で応えてバカみたい。

響き渡る声が僕の声じゃ無くなる時が、きっと来るに違いない。

気づくだけだ。

淋しさに。

一例の様子を赤子を抱きながら眺めていた紅マント。あぁ、消えてしまった。追い出す様に追い払う様にまた一人。

転がしたらさ、飛び石みたいに後でわかるんだよ、だって水玉光ってた。あの意味、私、考えたことない。見たんだ、落ちていたから。

水色マントはうつむいた。

「隠れて何かをやる事が膨らむと、鏡に身体持ってかれる。ゴム風船や缶詰め泥棒はワックス塗りで、ささくれた鰹節からすり替えがドーっと、ホースで色撒く菓子食うぞ。」

「みんな一生懸命、人間なっているだけだ。それが生きているっていう事だ。創っているっていう事だ。」

「やじるし描いたって意味ねぇぞ、走るふりやめて走るこったな。したら擦り傷見てくれれ」

水色マントの背に掛かる純白のタテガミの茂みからそんな言葉が発せられた。

「朝が来るまで寝た方がいい、そして淡々とやった方がいい」

タテガミから湧き出るその声は今を掴むと棚に乗せ、呆れた様に還って行った。暗くなったら面倒なんだよ。誰も見ないよ。それがいい。

時間ももう眠っていて、気づけば風も止んでいる。「ますます恐くなったな」水色マントはそう言って「夜は死んでくり抜かれたガになって小さな虫を這わせるよ、薬缶の湯気の輪郭で叩かれても透明な血なんだもの」と言い、伝染病にかかっていく4月の野花に壊れたギターを投げ捨てた。パカン。ビリビリ。

遠くの方で雨が降り、雲が嬉しそうに竜になった。初めての遠足は風布で沢蟹、僕は煙だった。

待っていたよ、あの人、ずっと。

「腑抜けにされてしまう。」

液状化していた瞬間は引きかえさずに瞼を閉じた。ーー暗闇に杭を。留まるんだよ。

決意に括られちゃ先へは進めない。

煙草。。ハサミで空気は切れまい。カミソリか包丁だよ。ノコギリは空気と遊んでいた。

自分の魂の絶叫と身体を一つにする必要がある。

淡々とやっているけれどここでは狭すぎる。肉が溢れて収まり効かず、だから包丁が必要だ。やんわり霞だってアンニュイの拍手にヒマワリ刈らすんだ。

引き留め人が片足から赤い色を垂らし呼んでいた。その糸は真っ黒い宇宙の彼方まで続いている、そこは確かな光だってある。光を探しているんだ。明るすぎて痙攣しスキップする目萎ます外光でなく。虫かごと絵本を空き缶に入れ振り回していた闇姫はその匂いで指を切った。

肩が膨れ、足は浮腫み、眼は腫れぼったくなっていく。抵抗は寂しい。俺は俺で無いからだ。

踊り手ならマッチ売りの少女の様に雪に埋もれて死んでゆけ。真実なんぞ暗すぎる。一つも握れ無いのだからな。

駅前の回転寿しが花火を打ち上げ片っ端から「いいじゃないか音頭」を鳴らすんだ。

「何にも引き返せないんだから。何処にも引き返せないんだから。映像の中にも真実がある。写真の中にも絵の中にも。」

花粉炸裂。眼に堅物。色気は泥滑り台の空間だ。一斉に飛んだ囚人たち。濡れなきゃ。

「ホツレがどうしても気になるんだよ。」

あのシミが、あの後全ての誇りを奪ったんだよ。サッカーのTシャツだった。大好きだったよ、黒いペレ。指差されてさ。

「自分を見る目ん玉が俺を清潔にしてしまう。眺めるとジェット機乗りだ。」

足枷やキラメキが闇姫(旧:水色マント)の身体を拭きはじめた時、

「踊りは何処へいった」

と言いながらチョンマゲピアスの少女が走ってきて青バケツの水を闇姫にブッかけて「ふやけちまえ」と叫びながら懐かしいうたを歌い始めた。

「キャンプラホイ、キャンプラホイ、キャンプラホイホイホイ、急に発した水マント、衰弱した脚敬礼だ、気を取り直し「漲れ」と、呼びかけ黙った膝だった。チポリーノ、チポリーノ!」

闇姫は「心はずっと上にあるのです」とガスを入れた風船を糸に括りしっかりと握っていたが、「やっぱりもうよくわからない」と呟き、その風船を「本当の場所へ行け」と離したのでした。

「愛が何なのさ」

闇姫はペニスにボンドを塗っている。

「焚き火だ焚き火だ落ち葉たき、、」

寒さも一緒に詰まっていて、やっぱり外は立て掛けられるくらいきんぴらだ。家具でも私でもない体でヨレヨレ風を待っているのは強くない、わたしだ。

「飛び出してな」

風は俺なのか。(窓を開けてもお腹なんか見つからなかった、、)

風がそう言った時、闇姫は曇り空の中、たった一つの場所へと向かっていた。

それは知っている場所だった。

いいか、これは扉だ。扉。

先程シトシト降り始めた雨は闇姫の骨と連なり激しさを増していく。竜が「お帰り」と笑った。その笑いは人間には見えまい。竜。それは淋しい場所で、私の「生きる」はその場所にしか吹かなかった。

何が流されたのか、雨は止んだ。よく見ると台風後の晴れ間が畳まれてやって来る。落ちているサムネイルは肉だ。鉄アレイ。

新品の風が手のひらから地上に転がっていた。

大地壊した場所に本当の大地があって。わかるだろう?

裸のポッケからラムネ菓子を取り出し二人掛けベンチに赤子を立たせた。落ちてもいいや。生きたんだもの。振り返ると、「私、居ない」と声がした。

日の暮れた神社には空っぽ太陽がいた。怖かった。唯怖かった。幼少期の味覚、あれは何だったの?今では平気でサーモン食べている。

俺の歯が齧っていたのは味なんかよりもっと大事な線だった。

命の傷にチメターイ風が鳴っててね。リン、リン。手放しこぎ、今でも指しゃぶりよ。

「なんだい、あいつ、態度コロコロ変えちゃってさ。」いいじゃないの、だって、君じゃないもの。好きなんだね。ワシャーッて、抱き締めたいね。そんな砕けた話も無かろうに。落語の冷たさは氷舐めだ。片足に泥乾けば仲良しにだってなれるさ。

「書かなければな」

「頭打ちつけたり息つぎしたり随分だよなぁ。。あ、‥絡まった。」

青く透きとおった釣り糸が舞姫に絡まっている。またかよ、まぁ、ちばりよ。また。

「頑張れ、頑張れな」

二回そう言って太陽は眼の上に腫れ上がった紫色のタンコブを「東の方角へ持って行く」、と飛びたって行った。

「お前には見えないのか。人が見ているのは確かに今ではないよ、でも、お前が見ている今にだって素敵なものが沢山あるんだよ」

「人間に見せる為の踊りなど無い。絶対にない。」

何回でも繰り返せ。ほうら、腹が云うだろう。腹は海だ、原っぱだ。

水を浴びた闇姫の身体は街灯に繋がれ冷たく静かになっていた。

それを見ていた銀杏は、硬い光に刺繍を入れ、土を塗ったドラム缶に投げ込むと「水滴が跳ねたり絵を描いたりする景色だけ収めた足裏は夕暮れの畦道に飛び交う夏虫の影と一緒だ。全部がグルグル回っていた」と発し耳を塞ぐ。ドラム缶に投げ込まれた光の刺繍が消滅する音は静かすぎて心臓にまで届いてしまって。焼き付くんだ。

変化している体は移動でも更新でもない様子。新しいが無いからだ。古さこそ今の臓器だ。もう、完璧であるからだ。でもその唇は紙切れよ。完璧さの意味よ、剥がれた紙切れに書いてあれ。

黙るために喋りまくるボールペンも握り拳も頼りないタコ焼きだ。固くて小さくて必死で。でも何にでも顔があるからそれを見ていた。木だって伸に鉛注がれてインディアンだったらびっくらよ。

好きなんだから嫌いなんだ。

ちくしょう。

青マントがツイッター見てる。

誰が読むんだ、こんなガラクタ。どうせ嘘っぱちさ。じゃあ、香らないのかい?

香るさ、叩いてみれ。触れたらな。

夏のパラソル、瓶サイダーのストローに管、海だね。ストロー、ストロー、ラジカセは怖い。ワイルドで刺激が強いんだ。青白の縦縞、大きな麦わらぼうし、定番でも普遍な場所が揺れて。揺れたから。その女、緩やかに手足、曲げる、浮腫んだ輪郭、イロモノ、あの大工の重たい手のひらで、剥ぎ取られる。濡れた朝のイノシシの、蒸気。黒い前足、ささくれた足。傷ついていたが俺より病んではいなかった。すぐそこに、死が見えた。殺されるなよ。後退りした踵に幾人かの愛されナマコ。

風が「貴重なもんだ」と肉芯(骨)に告げた。撫でられたから優しいんだ。

女の手足の寸法は秤にまでサンドイッチを食わす始末、決意を燃やす為に集められた竹の表情に似ている。額にいきなりカンナをかけた杉が「俺は危険じゃない」と言った。

「危険なのだ。何も食えない。運転もままならない。言葉もない。」

青マントは田んぼに透け透けカーテンをかけるとそれにくるまれ泥に埋まり水色マントになった。

そうなる事を知っていた踊り手はあばらを剥がすとその中に飼っている小さなガジュマルを水色マントに突き付けて

「べと付いてなんかいない」「風など吹かなくとも」と言って一粒の砂に戻り再び世界に耐えていた。

そんなのまた秋になるんだもの。

「甘ったれなのだな」、水色マントは慎重に正確に膝を齧る真似ばかりしている。

金メダルを全部捨てた世界はたった一つしかないよ。水色マントはマンホールの土を親指と人差し指で握り潰すと鼻にあてた。

するといなか道だって六本木だって水着舞踊にハチマキちまき。「土は優しいよ、ぺんぺん草の茎にぶら下がった雨粒は優しいよ」遠くの電線に止まった鳩は濡れてる。「過ぎ去る皆は優しいよ、彫られた堀は優しいよ、埋められた土地は優しいよ。ただし、お前が社会抱えるんならもっとぶつけなきゃ」。

ヘンテコ舞踊は一本の線を引き、「お前はやっぱり人間だ。」と水色マントの尻を蹴るようにして錆びた鍬となった。水色マントはその鍬を握るとドカッと床に当て、「俺が抱えるビー玉はお前らとは違うんだな」と発した後、しばらく黙り、「ありがとう」と言ってみた。カチンッ、ビー玉にピッケル。粒胡椒にビー玉頼んだら誉められたんだ。本当に欲しかっただけなのにな。

許してくれには金メダルがかかってしまうし、ポロポロ溢れる涙は瓶底眼鏡ね。マンガみたいなうそっこで、わたあめだってキチンと頬赤くしたよ。そよそよだって本当は好きなんだよ。

「命懸けで」と声がする。

ブレブレでもいい写真はいいんだよ。キチンと写ってる。

「お前が伝えたいことは伝わらない。毎日洗濯されると透けたTシャツになるよ。地球の声や土の声はもう聞こえない。かじかんだ雑巾絞った手は赤く腫れ上がっていたが今よりハッキリ立っていた。賢かった。今よりずっとふざけたよ。煤けた髪も叛旗を翻した脛当てもみんな洗剤かけられ消えてゆく。アーメンね。みんな死んで行く。一生懸命歯磨く。一生懸命靴履いて、一生懸命身の回り。はにわみたいにくり抜かれ化粧品だけ持ち歩く。星もみんな剥がされて癒し癒されソリ滑り、今日もドミノ倒してる。いらないこといらないで、何がそんなに淋しいの」

「捨てるな。耐える身体があるのなら、立ち尽くすだけの生がある。」

「美しい心、捨てるな」

そう言うとその声は水色マントの中を這いまわり、体内にいた人間を全て殺してしまった。「ほら、電球なんだよ。消えるんだよ。掃除なんかするなよ。俺は建物立てたんだ。階段ボクサーみたいに鮮烈な赤を、息を、切らしてキチーッて。それが何だ。誰に聞く。呼んだら犬来てまたサイサイ。」

呆気に取られた水色マントは「踊り手」と書かれたアルミの札を赤い紐で首からぶら下げて、再び降り始めた雨の中に繰り出し、しばらく立っていたが「生きる事が一番恐ろしい」と言うと公園の真ん中で「世界」と書かれた透明体を千切りはじめた。「やっぱり離れるのは怖い」「大きすぎると偽物だ」。膝に付けた水色マントの歯型はネギ焼きの支度を始める。ぼそり、と大根が顔を出した。

「申し訳ないが、雨も風もピッタリ俺のものだ」

水色マントは身体から初めて風を取り出すと体の中に雨をいっぱい降らし始めた。昼間の公園はすっかり晴れ上がり空の雲も乾きだしていたが、豪雨は激しさを増している。ちり紙だってキチンと正装をした。

水色マントは元気な時、ビルにだって埃にだって化けられた。百階建てだって登ったんだ。身体から届く範囲の死霊を全身で炙り始めた水色マントだったが、退屈したのか、真っ赤になった焚き火に手足を入れる素振りを見せたまま誰に頼まれたわけでもないのに真剣なふりをして、裂きイカの事を思った。心の裂きイカを引き裂くように踊り始めるとやがて温泉が湧く。悔しくて。馬鹿馬鹿しくって。。水色マントの身体は叙々に見当たらなくなっていった。

ゴッと風邪引きは咳をする。爪の合間に小人が石っころ詰めたんだ。靴にだって。温泉ビー玉や遅れてきた五年生、ポケベル、大群が来たが置いとくね。

今は水色マントの青白い骨に流れ落ちる川や、土、空の話だ。漠然と札がねぇな。だったら太陽だって取り替えれ。

細かさなんかはじめっからバラバラで、蟻んこさんが笑ってら。もっと力強いってね。

「ずっと続く踊りをね。」

そう言って踊り終えた水色マントは身体から白詰草やホトケノザを取り除いて「命だからな」と言った。

その時、はじめて、あの人が、何よりも大きいと知れる気がした。

テンカンを上手に利用して金切声を上げる退屈しのぎのちんちくりんと通りすがりの猫が息づいて敬礼柱になったり、歴史上初めての風カンナを左足が拾い上げたりするものだ。「輪郭ぐらい、自分でやる」。「優しすぎる」と注意したのは眼鏡かけたスーパー暮らしの兵隊だ。立ち入れない、台風で、彼の身体は淋しさをからかっている。

奴は恐れられている。。

カミナリさんカミナリさん、あんたはベビーフェイスなの?

叔母さんと自転車とがイチジクの中で。そのイチジクはチーターの様なスピードで。電車に体当たりして。

かなしいよ!

かなしい!

「不幸なこと、何にも無いよ!」水色マントは昔ポッケに入れたままだった言葉を目の前に置いた。

俺は、幸せだ。全くの幸せだ。

震える心を柱に括って時計の針を見つめていた。寝転がると尻の上に手のふりをした靴下が静寂の魂をゴムボールにして必死に食らいついて来た。汗はサラサラしていて、カラダは火照っている。自作のカードゲームなんかにも一生に一度のお願いを水撒きながら使用できるのだ。

自由。

懸命に遊ぶ子どもは足首時計より少し速い。闘いはやがてスリッパを履いて意義や意味で殴られる。役立ち機械はまな板だ。

今日はいいぞ、濡れも乾きもしていない。煤けささくれた棒人間、今日は遊びに来ないかな。

「甘いものには気を付けろ。なまぬるいものには気を付けろ。お前はお前を勘違いしている。コンピータにもスニーカにもあまり苦労掛けるな。」

「やっぱりますますそしたら良くなるぞ。」

途切れ途切れに水色マントは喋りながら、雪の上に真っ白に注がれる木漏れ日の内側から雪の芯が開かれるのを眺めていた。芯だって柿を食っていて水色マントに柿についた歯型を無意味に見せるのだ。

宇宙の手前には星も照っているが、はるか彼方はいよいよ暗く何にも何にもない所なのだな。そこへ行くと唯悲しさだけが増す様な気もするが、全てを愛せる気にもなる。

淋しいから、会えるよ。

痛い、痛い。真っ直ぐな裸だ。

「なぁに、闇と二人なら。地球だって瞼開く時もある。金タマなんで浮いてるか」

怖くかったのか真っ直ぐが痙攣したのか、水色マントは股下に風化したウルトラマン人形を握っている。草むら、今はあるかな。草むら。遊びじゃ、闇は破かれない。闇は、恐怖ではない。

「いいか、二度目は無しだ。何度やろうが今だ。」

「感動なんか嘘だろう」と雷が鳴った。、「絶対負けない。絶対勝つ。絶対。」

夜の浜に少年がたっている。石灰岩に波が砕ける轟音と「簡単だからな」と言い続ける稲光りから今すぐ逃げ出したいという気持ちと試練に耐えたら英雄になれるかもしれないという期待の隙間で「死にたくない」と細々と頭を垂れ、踊ったふりをしている私が見える。

「お前はもう、十分にやった」「逃げるとこ逃げなかった」。

そんな声がして、目の前は再び幼少期、帰り道に見た空っぽの夏になった。そこに誰にも触られなくなった剥げた遊具が置かれている。

たった一人で摩っては、鉄の匂いを嗅いでいた。

黄色いアスレチックの上に登ると、人は誰もいなかった。何にも思い付かない。俺は登りたかった。

「久しぶりに登ったな。」

その時、遊具の心がジワッと水色マントに染みて空に昇っていった。

「膝齧れ、一生懸命齧り付け」

そう笑った水色マントは「俺はお前じゃ無いからな」と霧の子どもに釘を刺して「もっともっと蒼くもなれる。」と小馬鹿にした様に静かな歯ぐきを見せていた。

「頼まれたことやって来た」「期待されたんだもの」そう言いながら右手にニンニクをぶら下げて歩いてきた少年に「嘘をつくなよ」と言い、月を見ていた。歩く。バラバラになった手足はまだくっついているんだ。

少年は、もう、少年でなかった。

遊び始める先の場所へ、行くんだ。

最後に本当に、嘘みたいに、山だけが光る。空もアスファルトも光らなかっんだ。

子どもだと笑う声はもう遥か彼方だ。

割れないよ。みんな濡れて哭くだけだ。

日が完全に暮れた時、水色マントの体は青色に光はじめていた。やがては赤い太陽になる。

「何だか清々したな」そう言った青マントに

スプレー缶に銀を詰めるルードボーイが話しかける。言葉ではない。眼で。身体は爆発したサッカーボールの様か。違う。温かい。

青マントは焼け跡の様にも見えた。

「強がっていたのかも」

そう青マントがこちらに向けて笑った時、時間の包帯がハラリとほどかれ、そこからせらせらと光グズがこぼれ落ち、大気に染みていくのが見えた。縫われても全く別々だ。

団地の5階から乗り出し壁面をつたって遊んでいた少年から「驚かせたいだけだった」と声がする。その声は思えば何度も何度も足首を握っては揺すっていたな。

ニーナ、きみは僕。

ニーナ、旅に出よう。

ニーナ。

 

ニーナ

生まれるんだ

ニーナ

願いが使わした白炎

 

強く祈る手のひらの中に、眼を閉じれば

きみは腹に舞い降りて

暗闇の中、

たった一人の

僕だけのために

 

たった一人の

僕と生きて死ぬ

ただ、それだけのために

 

ニーナ、ぼくときみを見た

あの土手の上で

 

わたし

かなたよりすくお

きみはきみ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020

 

 

 

 

 

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